しみ/疾患 治療/レーザー治療

しみドットコム 主催:品川シーサイド皮膚・形成外科クリニック

しみの疾患と治療法

老人性色素斑

一般に「シミ」と称される疾患のなかで、最も高頻度に認められる疾患である。中年以降の顔面、手背、前腕などの日光暴露部位に多発し、加齢と共に増加することが多いが、20歳代から出現することもある。褐色斑が小型(雀卵斑様)、大型(2-3cm径)あるいは白斑と色素斑が混在する場合もあり、後述の脂漏性角化症が同時に認められることもある。光老化による角化細胞の異常により、メラノサイトが活性化されてメラニン産生亢進状態になり、また、メラニンを分解・消化する能力も低下しているため、メラニン色素が沈着してしまう病態と考えられている。

治療法

Qスイッチレーザー

Qスイッチレーザーは確実に色素斑の病変部を破壊して治療効果が確実に期待できるが、レーザー照射後5−10日間程度痂皮を形成するために、照射部位の化粧が出来ない。また、レーザー照射後1-3ヶ月間は炎症後色素沈着のためにかえって色調が濃くなることがある。炎症後色素沈着を抑制するために、後治療として美白剤を使用すると効果的である。治療後も遮光は当然ながら必要である。

IPL(光治療)

メラニンに吸収される波長の光線を選択して、表皮にダメージを与えずにメラニン沈着部位に微少痂皮を形成し、メラニン排出を促進する。ダウンタイムの無い(痂皮を生じずに、化粧も出来る)治療を希望されるときは適応となる。特に薄い色素斑に対しては効果がある。但し、1回の治療では除去できず、病変を繰り返し照射する必要がある。色素斑の完全消失は難しいが、かなり色調を薄くできる。治療後も遮光は当然だが、美白剤を継続すると再発の抑制を期待できる。

美白剤外用

美白剤単独療法では、時間をかければある程度色素斑を薄くすることは可能であるが、完全に除去することは難しい。当然ながら、治療中ならびに治療後の遮光対策は必要である。色素斑を除去するためにはレーザー治療に美白剤の併用が効果的と考えられる。

CO2(炭酸ガス)レーザー

老人性色素斑に脂漏性角化症を伴っているときは、CO2レーザーで脂漏性角化症の部位を照射して除去する。それ以外の老人性色素斑部位はQスイッチレーザーなどの治療を行う。

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脂漏性角化症(老人性疣贅)

高齢者に頻繁に認められる良性皮膚腫瘍で、黄褐色から黒褐色調で境界明瞭な楕円形あるいは不整形を呈する扁平あるいは隆起性の結節である。表面は粗造で角化傾向が強く、表面に光沢が無い。潰瘍や糜爛を形成することが無い。顔面、頭皮、体幹部に好発し、加齢と共に増加する。悪性化することは無い。光老化による角化細胞の異常増殖とメラノサイトの活性化によるメラニン産生亢進が主体と考えられている。内臓悪性腫瘍に伴って短期間で汎発性に生じる(Leser-Trelat徴候)時があり、その兆候がある場合は内臓腫瘍の検索を優先する。

治療法

隆起の厚い病変では、炭酸ガスレーザーは均一な深さで病変を除去できるので、整容的に満足する結果を得やすい。隆起が軽度の場合はQスイッチレーザーも効果がある。その後は、炎症後色素沈着予防に美白剤と遮光を併用する。この他に、液体窒素による凍結療法電気焼灼外科的切除なども行われる。

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雀卵斑

顔面の下眼瞼、鼻背、頬に左右対称性に生じる多発性の不整形の小色素斑(5mm以内)で、色調は褐色、灰褐色で、表面は平坦である。幼小児期から出現し始め、思春期頃で目立つようになり、日光照射により小色素斑の褐色斑が際立つことが多い。発症頻度に人種差があり、白人の赤毛の人に多く、日本人では色白の人に多い傾向がある。表皮基底層のメラノサイトの数は正常だが、メラニン産生が亢進していると考えられている。メラニン形成や移動に異常があるのではないかと考えられている。常染色体優性遺伝(4q32-34)が多いと考えられているが、その他の遺伝形式もある。

治療法

Qスイッチレーザー
1回の照射で著効を示す。
IPL(光療法)
数回に分けて繰り返し治療して軽快するが、再燃することも多い。
※当然ながら両者の治療方法後は日焼け防止も必要である。
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肝斑

顔面の露光部(両頬、時に額や口囲)に対称性の境界明瞭で単調な褐色性色素斑が20-40歳代の女性に発症することが多い。上下眼瞼を侵すことはなく、先行する炎症症状や自覚症状を欠き、紫外線暴露により増悪する。表皮基底層のメラノサイトの数は正常だが、メラニン産生が亢進していると考えられている。女性ホルモンの関与が示唆されており、紫外線暴露は発症・増悪因子になる。また、妊娠、経口避妊薬、抗痙攣薬、内分泌異常、肝機能障害、遺伝因子、化粧品などの因子も関与していると考えられている。

治療法

蓄積したメラニンの排除ならびにメラニンの合成抑制および長期的な遮光が必要である。

トラネキサム酸+ビタミンC内服
内服にて確実に改善するが、中止すると再燃する。
美白剤外用(ハイドロキノン、トレチノイン、ビタミンC誘導体など)
美白剤による漂白作用で改善するが、中止すると再燃しやすい。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングとビタミンCのイオン導入を併用すると、改善効果が高い。
IPL(光治療)
治療効果がある場合と、治療により悪化する場合があるので、一概には推奨できません。
※肝斑にレーザー治療を行うと色素斑が濃くなるので禁忌
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扁平母斑

境界明瞭で色調の均一な褐色斑で、生後早期から明瞭になることが多いが、思春期になってから発症する場合もある。自然消失することは無く、悪性化することも無い。通常は単発性であるが、褐色斑が6個以上あるときは、神経線維腫症を疑う。遺伝性は無いが、先天性とする考えと後天性とする考えがある。

治療法

レーザー治療
Q-スイッチレーザー、ウルトラパルスCO2レーザーなどによる治療が行われるが、数ヶ月すると再発することが多い。一般的にはレーザー治療の有効率は20-30%である。従って、一部病変にテスト照射を行って効果の有無を確認してから治療を行うことが望ましい。
ドライアイス圧抵療法
レーザー治療と同様に、試験的に部分的な治療をして効果がある場合は全体的に拡大する。繰り返し治療で、脱色素斑や肥厚性瘢痕を生じる可能性があるので注意が必要である。
皮膚剥削術
切除縫合術:小病変であれば、形成外科的に切除できる場合もある。化粧で病変を隠す。なお、美白剤による効果は無いとされる。
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太田母斑

顔面の三叉神経1-2枝領域(額、眼瞼周囲、頬、眼球結膜、口蓋粘膜、鼻翼、外耳など)に生じる青褐色斑で、通常片側性であるが、稀に両側性に生じることもある。病変は生後1年以内に生じることが多いが、思春期以降に生じることもある。本邦における頻度は人口の0.1-0.2%とされ、女子に多い。人種別では、黄色人種に最も多く、ついで黒人、白人の順である。成因は胎生期の神経管から遊走する皮膚メラノサイトの定着過程での異常と考えられており、病理所見では表皮基底層のメラニン沈着と真皮メラノサイトの増加を特徴とする。

治療法

Qスイッチレーザー
太田母斑の治療の第1選択となる。1回の照射では治癒せず、2-3ヶ月毎に繰り返し照射が必要である。一般に、青色調が強いものほど真皮深層にまでメラノサイトが存在するため、治療回数が多くなる。また、眼球結膜の病変は、レーザー光線による網膜障害(視野欠損や失明の可能性など)が憂慮され、未だ有効な治療方法が無い。ドライアイス圧抵や植皮術は過去の治療方法になりつつある。
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後天性対称性真皮メラノサイトーシス

対称性に褐色あるいは灰褐色斑が顔面(両頬、額、鼻翼、上眼瞼外側など)に皮疹が生じ、女性に圧倒的に多い。四肢、体幹にも生じうるが少ない。発症年齢は若年から中高年にかけて生じるが、特に20歳代に発症しやすく、女性ホルモン、妊娠、炎症、紫外線照射、遺伝などの関与が考えられる。出生時から幼弱あるいは不活性型のメラノサイトが真皮内に存在して上記の誘因などで顕症化すると推定されるが、詳細は未だ不明である。

治療法

Qスイッチレーザー
太田母斑同様、繰り返し照射にて徐々に色調が軽快する。
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光線性花弁状色素班

海水浴などで強い紫外線を浴びて水疱などが生じた後にできる多発性で大豆大までの色素斑である。色白の男に多く、花弁状あるいは金平糖状で、辺縁不整形の褐色から黒褐色の色素斑が上背部・肩、上腕伸側上部に多発・散在する。

治療法

Qスイッチレーザー
Qスイッチレーザーによる治療で効果を期待できるが、照射後1-3ヶ月間は炎症後色素沈着が生じる。炎症後色素沈着を抑制するために、治療前後に美白剤を使用すると効果的である。治療後も遮光は当然ながら必要である。この他に、液体窒素療法やケミカルピーリングが治療として考えられるが、効果は不定である。
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炎症後色素沈着(固定薬疹、摩擦黒皮症、色素沈着型接触皮膚炎などを含む)

炎症後色素沈着は3-6ヶ月程度で軽快することが多いが、時に長期に遷延することもある。また、白人より東洋人に生じやすいとされる。炎症が軽度で真皮上層に限局しているのであれば、表皮にあるメラノサイトのメラニン産生が亢進して褐色の色素沈着が生じるが、強い炎症が生じた場合は角化細胞が崩壊して、角化細胞に含有されていたメラニンが真皮に滴落し、メラノファージが多くなって紫褐色の色素沈着が長期に残存する。炎症後色素沈着の発生機序は、アラキドン酸代謝物質、superoxide、サイトカインなどの関与が指摘されているが、詳細は不明である。

治療法

炎症を生じる炎症の除去が最優先であるが、生じてしまった色素沈着には、トラネキサム酸ビタミンC&E内服美白剤外用(ハイドロキノン、トレチノイン、ビタミンC誘導体など)Q-スイッチレーザーなどで行うが、症例によって反応が異なることもある。
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黒子(母斑細胞母斑、色素性母斑)

殆どのものが茶褐色から黒色調を呈して色調に濃淡が無く、帽針頭大から斑状を呈するものまであり、形状は均一で類円形あるいは楕円形のものが多い。潰瘍や出血を伴わない。神経堤由来の母斑細胞の増殖からなる病変で体表面のどの部位にでも生じる。悪性黒色腫との鑑別が重要で、ダーモスコピーや生検を要することもある。
時に、母斑周囲が脱色素斑になっている場合があり、Sutton母斑と呼ばれる。 また、生下時から剛毛を有し、獣皮様で広範囲の色素性母斑を巨大色素性母斑と呼ぶ。この巨大色素性母斑から生じる悪性黒色腫の発生率は3-7%とされる。

治療法

外科切除炭酸ガスレーザー電気凝固冷凍療法などで治療する。大きな病変の場合は皮弁術や植皮術も行われる。
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青色母斑

軽度隆起してやや硬く触れる青色から暗青色調の結節あるいは斑で、顔面、手背、足背、腰・臀部などに好発する。真皮メラノサイトの腫瘍性増殖と考えられる。細胞増殖型はかなり大きくなり、時に悪性化してリンパ節転移を認めることもある。

治療法

通常は外科切除でよいが、細胞増殖型は病変を完全に取りきることが重要である。
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基底細胞癌

中高年の顔面(胎生期顔裂線近傍:下眼瞼、内眼角部、鼻唇溝など)に好発する。臨床像は多彩で、結節・潰瘍型、瘢痕扁平型、表在型、斑状強皮症型、Pinkus型などがあるが、最も多いのは結節・潰瘍型である。初期は黒子様の小結節であるが、徐々に増大して中央が潰瘍化する。腫瘍内はメラニン沈着を伴って黒色調を呈することが多い。

治療法

局所浸潤はあるが、リンパ節転移や遠隔転移は稀で、外科切除が第1選択となるが、放射線治療を行うこともある。予後は概ね良好なことが多いが、不十分な切除は再発をきたすばかりでなく局所破壊性を増し転移する可能性もあるので、初回治療が重要である。
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悪性黒色腫

メラノサイトの癌化により生じる腫瘍で、メラニン産生腫瘍のために黒褐色調を呈することが多いが、無色素型のものもあるので注意を要する。早期にリンパ節転移を生じやすく、有効な抗悪性腫瘍剤が少なく、放射線感受性も低いので、予後不良になりやすい。病変は非対称性で辺縁や色調が不整で、隆起、結節、糜爛、潰瘍などを伴うこともあり、黒子型、表在拡大型、結節型、末端黒子型に分類される。臨床症状から診断はほぼ可能だが、診断に迷う場合はダーモスコピーも有用である。それでも診断が困難な場合は病巣辺縁から2mm程度離して生検して組織診断する。

治療法

診断確定後、その病気分類に従った治療を行う。転移を生じた進行期の治療は難治で、未だ有用な治療方法は確立していない。
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日光角化症(老人性角化症、老人性角化腫)

高齢者の日光露出部(顔面、手背など)に生じる紅斑角化性病変で、初期には単発あるいは多発性の角化・鱗屑を伴う紅色ないし紅褐色病変で、自覚症状を欠く。徐々に拡大して表皮肥厚・糜爛・過角化などの変化が混在してくる前癌性病変であり、20-25%が有棘細胞癌に移行する。

治療法

外科切除による全病変切除が望ましいが、凍結療法5-FU軟膏外用を行うこともある。
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色素性乾皮症

ヌクレオチド除去修復に遺伝的な欠損あるいは低下があるために、紫外線誘発性のDNA傷害を自己修復できず,日光露出部に皮膚癌(基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫など)を高率に生じる常染色体劣性遺伝病である。紫外線照射後のDNA除去修復に異常のある7種の相補性群(XP-A〜XP-G)と、DNA除去修復機能は正常で複製後修復に異常が見られるバリアント(XP variant)に分類されている。各相補性群で修復能,皮膚症状の重症度,神経症状の有無に差がある。人種によってXP各群の頻度は大きく異なっているが、日本人ではA群が最も多く、ついでバリアント、F群の順で、性差は無い。相補群では、乳児期から日光暴露後に強い日焼け反応が生じ、生後数ヶ月で多数の小色素斑・脱色素斑と乾燥皮膚になり、神経傷害(末梢神経傷害、聴神経傷害、小脳失調、錐体外路・錐体路徴候、知的傷害など)、眼症状などを合併し、加齢と共に進行する。バリアントでは、小学高学年頃から小色素斑が多発して皮膚が乾燥して皮膚癌を発症してくるが、神経症状を伴わない。活性酸素消去を有するsuperoxidedismutaseの低活性や、細胞性免疫の低下も指摘されているが、色素性乾皮症の神経変性機序の詳細は未だ明らかにされていない。

治療法

紫外線遮断が最優先治療であるが、紫外線による酸化物質の産生抑制のために、抗酸化食品の摂取も必要である。
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色素性失調症(Bloch-Sulzberger症候群)

生後まもなくより生じる特徴的な皮膚症状と中枢神経(四肢麻痺、痙攣、癲癇、知能発育不全など)、眼(眼底血管異常、網膜剥離、斜視、白内障、視神経萎縮、水晶体混濁、緑内障など)、歯(歯牙欠損・形成不全)、骨格(側湾症、脊椎披裂、合指症、耳介変形、小頭症など)、爪、毛髪などの異常を合併するX染色体優性遺伝性疾患(Xq28;NEMO遺伝子異常)である。特徴的な皮膚症状とは、生下時あるいは生後まもなくから発症する線状ないし列序性の水疱を伴う丘疹;その後に生じる疣状丘疹;発症後数ヶ月〜年後に生じる色素沈着。思春期から20歳頃には脱色素斑と皮膚萎縮が残ることが多い。

治療法

本症の予後は合併症により左右されるので、その精査と治療が重要である。
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主に顔面に色素沈着を生じる「シミ」疾患

* 完全に先天性と後天性に割り切れない疾患もあるので、これは一つの目安と考えて下さい。

先天性

  • 扁平母斑
  • 青色母斑
  • 雀卵斑
  • 色素性乾皮症
  • 色素失調症(Bloch-Sulzberger症候群)

後天性

  • 老人性色素斑
  • 脂漏性角化症(老人性疣贅)
  • 肝斑
  • 太田母斑(先天性もある)
  • 後天性対称性真皮メラノサイトーシス
  • 光線性花弁状色素斑
  • 炎症後色素沈着(固定薬疹、摩擦黒皮症、色素沈着型接触皮膚炎などを含む)
  • 黒子(母斑細胞母斑、色素性母斑)
  • 日光角化症(老人性角化症、老人性角化腫)
  • 基底細胞癌
  • 悪性黒色腫
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鑑別疾患

全身性(メラニン増加)

  • Addison病
  • Cushing病
  • Nelson病
  • 甲状腺機能亢進症
  • Stein-Lenenthal症候群
  • 巨人症
  • 末端肥大症
  • 妊娠
  • Cronkhite−Canada症候群
  • ナイアシン欠乏症(ペラグラ)
  • 吸収不全症候群
  • Whipple症候群
  • Crow-Fukase症候群
  • 色素性蕁麻疹
  • ポルフィリン症など

全身性(メラニン+異物沈着増加)

  • ヘモクロマトーシス
  • 慢性肝不全
  • 慢性腎不全
  • Wilson病
  • Gaucher病
  • Niemann-Pick病
  • Hartnup病
  • Hodgkin病
  • 薬剤性色素増加(抗悪性腫瘍剤など)
  • アルカプトン尿症
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